top of page

サイバーパンク作品について 

2014年10月7日講義 グローバリズムとSF
巽 孝之先生

 正直なところ、「サイバーパンク」という単語を聞いて、私にはピンと来なかった。‘サイバー’はわかるとして、‘パンク’とはなんだろう?セックスピストルズとか?といった具合の知識しかなかった。しかし巽先生の講義を聞いて、遠くに感じていたサイバーパンクが、実際には身近な題材だと気づいた。なぜなら、私は幼い頃からコンピュータに接しているいわゆるネット世代であり、インターネットを通じて誰かと繋がることや、アバターを作ってもうひとりの自分をネット上に創りだすという状況に慣れているため、多くのサイバーパンク作品の「大規模なネットワークに接続し取り込まれる」という設定がとても受け入れやすいからだ。またサイバーパンクは‘パンク’と名の付くこともあって、一般的なSFではなく、物語上で登場人物が体制に対して抵抗や反発をするという主軸を持っている、ということがとても興味深く感じた。

 

 サイバーパンクについて一切知識のなかった私だが、調べてみると知っている作品がいくつかあった。まず巽先生以前の授業で扱った『ニューロマンサー』はもちろん、日本の作品では大友克洋の『AKIRA』、『攻殻機動隊』、そして有名な『マトリックス』など、思っていたよりサイバーパンクというジャンルは身近な存在であった。

 

サイバーパンクの定義を知った上で、自分の経験を思い返してみると、一つの作品にたどり着いた。それは『メタルギアソリッド』というテレビゲームである。この作品はサイバーパンクと呼べるのか微妙なラインではあるのだが、私の兄が発売当初からのファンであり、兄がプレイしているのを渡しは隣でよく見ていた。このゲームは敵から見つからないことを目的にするという‘ステルスゲーム’という斬新な概念をゲーム界に広めたことでも有名である。主人公が作中で「体内通信」という音声を発しなくても相手と通信ができる装置を多用するのだが、当時決まった台詞がポップで示されるだけのゲームが多かった中、登場人物たちが自由に喋る姿がとても印象的だったのを覚えている。この体内通信のようにメタルギアソリッドには最新の技術を使った兵器や装備が多く登場し、組織にたった一人(正確に言えば仲間はいるのだが)立ち向かっていくところなどはサイバーパンクと共通する要素があるのではないかと思う。またこのゲームのプランナーとして有名な小島秀夫は、メタルギアソリッド開発以前に『スナッチャー』というアドベンチャーゲームを開発している。これは小島自身が認めているように、映画『ブレードランナー』をモチーフとしたサイバーパンクの世界観を表した作品だそうだ。その証拠に、作品の中にはブレードランナーへのオマージュと見られる台詞やアートワークが多く使われている。ここに一つ引用を示したい。

 

“一番わかりやすいもので、アルタミラ前でのうどん屋(映画ではヌードルバー)の店主との掛け合いで映画と丸々同じ台詞回しがある。

店主「空きました、空きました、いらっしゃい、いらっしゃい。・・・さぁどうぞ。なにしましょうか?」

主人公「これを4つくれ」

店主「2つで充分ですよ!」

主人公「いや4つだ」

店主「2つで充分ですよ!」

主人公「うどんも」

店主「わかってくださいよ!」

主人公「(・・・女房に言われたっけ。よく食べるわねって・・・)」

(映画では「よく食べるわね」の代わりに「あなたは冷たい魚ね」)

―コナミウィキより引用 http://ja.konami.wikia.com/wiki/%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC

 

 今までSFやサイバーパンクといった分野にあまり興味を持ってこなかったが、今回講義の中で知ったサイバーパンクは未知のものではなく、既視感のある概念だった。それは意識していなくても私の周りにはSFが溢れていて、自分も知らず知らずのうちにそのイメージを自分の脳内に取り込んで一般化しているということなのかもしれない。そして30年前にはSFだった世界に着実に現実社会が近づいていっていることも事実だと思う。これからの未来の世界をどのように想像するのか、この講義のおかげでサイバーパンクもその一つの方法として自分の候補に挙がるようになった。

Risako Hayakawa

bottom of page