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身近にある神話 

2014年7月22日講義 異世界ファンタジーを創造する
ひかわ 玲子先生

 身近にある神話の例として、人魚を取り上げたい。人魚とは、広辞苑第六版によれば「上半身が人間(多くは女人)で、下半身が魚の形をした想像上の動物」である。この人魚を取り上げた有名な作品としてはデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンによる「人魚姫」や、それを原作としたディズニー映画の「リトル・マーメイド」などが挙げられるだろう。その他にもアニメや漫画などに人魚が登場することも数多くあり、世界的にも大ヒットとなった尾田栄一郎による「ONE PIECE」にも人魚をモチーフとしたキャラクターが数多く登場する。このように人魚という存在はさまざまなメディアで、さまざまな作品の中で取り上げられ、世界中に住むほとんどの人がその存在を知っているものではないだろうか。そしてそうしたメディア作品などに取り上げられることによって、私たちにとって身近な存在となっているのではないだろうか。

 日本において人魚に関わる伝説として「八百比丘尼」という話があり、これは多少の違いはあれど日本のほぼ全国に伝わる話である。そのおおまかな内容は人魚の肉を食べた娘が不老不死となり、その後は比丘尼となり八百年生き続けたというものである。この「八百比丘尼」の伝播時期に関して九頭見和夫は「鎌倉時代頃から、遅くとも室町時代後期には、人々の間で広く知れ渡っていた伝説である」と推測しており、人魚の歴史の深さをうかがえる(1)。

 

 個人的に、人魚というのは神秘的なモチーフとして扱われるイメージを持っていたのだが、人魚は不吉の象徴とされることが多いようである。その背景には人魚というのはやはり異種異形のものであるため、人々にあまり受け入れられない存在であるという事があるのだろう。実際、人魚を題材にした作品において人魚が幸せになる例というのはあまりなく、アンデルセンの「人魚姫」においても主人公である人魚姫は最終的に死を選び、小林未明の創作童話「赤い蝋燭と人魚」においても、人魚の娘は大金と引き換えに香具師に売られてしまうこととなる。

 

 今まで人魚の標本とされるものが出回ったこともあるようだが、どれも偽物とされている。作品の中の人魚像というのは美しいものが多いが、実物が万が一発見された場合のことを改めて想像してみると、確かに少しぎょっと、気味が悪いと感じてしまうのかもしれない。

 

引用・参考文献

(1)九頭見和夫、「日本の「人魚」伝説 ―「八百比丘尼伝説」を中心として―」、http://ir.lib.fukushima-u.ac.jp/dspace/handle/10270/3561、最終アクセス日2014年10月4日

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E9%AD%9A#.E5.85.AB.E7.99.BE.E6.AF.94.E4.B8.98.E5.B0.BC

Ayaka Inoue

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