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Ⅰ.SF作品に見る女性像

~戦う女性像~  

2014年4月29日講義 フェミニズムSF
小谷 真理先生

 戦う女性像ということで、わたしは宮崎駿監督作品である映画「もののけ姫」に登場するエボシ御前の女性像について考えた。

このエボシという人物は鉄を生成するタタラ場を治める女性である。彼女は売られた女や、また病気によって社会から差別を受けているような者たちをタタラ場に置き、仕事を与え有意義な生活ができるようにしており、人徳のある人物であることがわかる。そのためタタラ場にいる者たちからは非常に慕われており、部下たちからの信頼も厚い。多くの者を統制する能力をもち、圧倒的な存在感のある人物だと考えられる。彼女は今後のタタラ場の発展を考えており、野心家としての面もみられる。

 

 さらに彼女はあらゆる仕事を部下たちに任せきりというわけではなく、たとえば新しい銃が出来上がった時には作業場に自ら赴き、銃の持ち心地や打ち心地を試すといったように行動力のある人物であることがわかる。彼女の人望が築かれた背景には、こうした現場の人間との実際の関わりというものが一因としてあるのではないだろうか。彼女は実際の戦闘においても最前線に立ち、自ら銃を撃っている。人間や動物など敵となるものに対しては容赦がなく、冷酷な面もみられる。しかしこれは戦闘における敵への態度として当然のことであり、戦の場面に応じて部下たちに対してしっかりと指揮しており、相手に怯えることなく冷静に物事を判断することのできる人物であることがわかる。タタラ場に侵入したサンとの戦闘シーンにおいても、彼女の戦闘能力の高さがわかる。相手の動きを予測する観察力や攻撃を躱す身体能力の高さ、刃物を持った相手に対する物怖じすることのない姿勢というのは、彼女の身体面での強さに加え精神面での強さも表しているのではないだろうか。

 

森を切り崩してタタラ場を大きくしようとするエボシは、自然を守りたいと考えているアシタカやサン、動物たちと対立する立場である。彼女はシシ神の首をとるという計画を企てており、その計画をアシタカやサンに阻まれるも、結果的にシシ神首をとることに成功する。この計画を実行する過程からは、目的を達成するためならば手段を選ばないというような攻撃的な印象を受ける。こうした姿勢は信念を持った強い女性であると捉えることができる一方で、頑固で非情な人物と考えることもできるのではないだろうか。

 

物語の終盤では山犬のモロに腕を噛みちぎられ片腕となり、またシシ神の首をとったことからタタラ場も壊滅的な状況となるが、そうした厳しい状況に対して諦めるのではなく村の再建に意欲的であり、残ったタタラ場の者たちを再び引っ張っていこうとする彼女の精神面の強さを見受けることができる。

 

 物語の全体を通して、エボシという人物は芯のある強い女性であり、また多くの者をまとめるだけのカリスマ性をもつ女性であると私は考えた。

 

Ayaka Inoue

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